このサイトは、ホラス・ウルムとその製作品の紹介が主要テーマですが、その前に私の紹介と道のりを簡単に説明したいと思います。
収集を始めて、芸術界、特に古美術に接してもう30年以上になります。そのおかげで、アマチュアであっても、「知識を持ったアマチュア」になることができました。
* エキスパートになるには公式の鑑定家の免状を持つ必要があるのですが、私はそれを持っていないのです。
昔の科学的な電気器具や無線通信機が私の得意分野で、ホラス・ウルムのブランドの製品を専門にしています。
他のブランドよりホラス・ウルムのほうを選んだ理由
収集と収集家はたいてい同じような過程を経て成長しています。最初の段階では、買うのであれ貰うのであれ手に入るものは何でも回収します。もちろん、金銭的余裕次第ですが。
次の段階では、自分の知識と財政状態が向上するにつれ、やっとあるテーマ、ある時代、あるいはあるメーカーを優先的に収集するようになります。そして最終的に、収集が形作られてくるわけです。
私も、ホラス・ウルムについての資料と無線通信機をこのようにして集めてきました。
無線通信機を集めようと思ったのは、高級で珍しいものだからではなくて、その製造者がだれだったのか、どんな風に考えていたのか、ということに興味があったからです。
私の道のり
はっきりと異なる二つの段階から成り立っています。
まずはホラス・ウルムに関しての本を作成することでした。
「ホラス・ウルム(1880-1958):その万華鏡のような一生」という本。それは伝記と自伝を合わせたイラスト付きの本で、故意に100冊しか印刷していません。それぞれに番号がついています。私が執筆の世界へ入門した理由などに関しては、興味のある方は上の「本」をクリックして下さい。
もう一方はウェブサイトを立ち上げることでした。
文章を作成するというものは、出版を目指す個人的な営みですが、私の場合はある程度内輪の出版にしたかったのです。しかし、出版物の数を限ると同時に、私の生きがいを広く知らせて伝えたいという矛盾がありました。その矛盾をどう乗り越えられるかと考え、出てきた答えはサイトを作るという作業です。
ホラス・ウルムの回想録の1ページ目から引用します:「民衆の知恵で言われるように『倦怠は単一性から生まれる』のではないか」
ホラス・ウルムの世界を把握するためには、彼が属していた経済的・社会的な背景、またはその時代の思想、戦争とその影響を含めて考えないわけにはいきません。ホラス・ウルムの道のりを説明するにあたっても、思想的・知的側面を無視して技術にだけ集中するのは大きな誤りです。
したがって、技術と芸術の両面を合わせるほうがより適切だと思ったわけです。本人の回想録を参考にして、ホラス・ウルムの長所や短所など、人物を語るのがよいと思われました。
耽美主義者と芸術家であったホラス・ウルムは型に嵌らない技術者でもありました。。
今でも彼の器械の簡素な形状とその前衛的な「デザイン」に驚かされます。機能性と合理性とが浸透していたということにおいて、無線通信機器のほかの製造者と発想が全く異なっていました。その上、幼い頃に自分が決めた信条を一度も破ったことがなかったのです。
「好きな仕事だけをする」
同業者のすべての機関で活躍していたのにもかかわらず、ホラス・ウルムは「偉人」の一人にはならないでしょう。われわれの消費社会(または消費主義会社)の考え方から遥かに離れていて、生き方と製造の仕方において自ら自身を除け者にしていました。
ある同時代人にとってはホラス・ウルムはただの「音楽家」や「人のいい香具師」だったものの、現代になって一番珍しい無線通信機の製作者とされていて、その製作物を収集家が必死に求めています。
したがって、このサイトは収集家たちからの追悼でもあるのです。
まさしく本物の芸術家でした。
ウルムに脱帽!
ルイズ・ブルノ